
ブックオフの2ユーロコーナーで買った本も、アマゾンで取り寄せた本もすべて読んでしまった。仕方なく、友人から譲り受け、大切に取っておいた、『深夜特急』(全6巻、沢木耕太郎著、新潮文庫)に手をつけた。大沢たかお主演のテレビ版は好きだったが、なぜかオリジナルに縁がなかったのだ。
香港からロンドンまで、乗り合いバスで放浪する旅の間、「私」がチャイ(お茶)を飲む場面が何度も登場する。トルコのイスタンブールで、アジア側からヨーロッパ側に渡る船の中でも。
ほんの15分ほどの乗船時間だが、香港からシルクロードと、アジア各国を渡り歩いてきた「私」が、ヨーロッパ大陸を目前にし、チャイを手に感慨にふける大切な場面だ。
トルコを旅した思い出がよみがえった。
2年前、私も両岸を行き交う船に乗り、チャイを飲んだ。私の場合、ヨーロッパ側からアジア側に渡っただけで、それほどの感慨はなかったのだが、雨が降る肌寒い日だったので、熱いチャイがありがたかった。(写真右:アジア側の商店街の鮮魚店)
船の中でチャイ売りが回ってくるのに驚いたが、滞在するうちに、トルコの人は、しょっちゅう、チャイを飲むことに気がついた。
店に入れば、「まあ、チャイでも飲んでいきなさい」と出してくれる。屋台に出た靴屋さんで買い物をした時は、通り過ぎるチャイ売りを呼び止め、チャイをごちそうしてくれた。
最初こそ、「絨毯を売りつけようと、下心があるのでは?」「眠り薬が入っていたら?」と身構えたが、しばらくすると、「そういうものか」と遠慮なくごちそうになるようになった。
「普通のと、アップル味、どちらがいいですか?」と訊かれる。甘酸っぱいアップル・ティは粉末で売られているもの。スーパーで、ピラフの素や、粉末スープなど、トルコ食材と一緒におみやげに買うと、小さな受け皿付きのチマチマしたチャイグラス・セットまで欲しくなってしまった。道具馬鹿っぷり、炸裂、in トルコ。
おみやげ屋さんが集まる、グランド・バザールへ。(写真右)
チャイ・グラスはいたるところで売られている。
好みの柄のグラスを見せてもらう。美しいカッティングを自慢するかと思いきや、店の人はいきなり、グラスを地面にゴンゴンとたたきつける。「やめて!」と叫ぶと、相手はニヤリ。どこでもチャイの盆を持ち運ぶ習慣だから、落ちても「割れない」ことが一番大切らしい。
選んだら、値段交渉。トルコでは言い値で買ってはいけない。
かなりしつこく値切ったつもりだったが(値段は忘れました)、翌日、同じようなものが、町中のスーパーで桁違いに安く売られているのを発見。
店のお兄さんは「スプーンもつけますから、もうこのへんで勘弁してくださいよ〜」と困り顔だったが、あれも演技だったのか。こちらとしては、買い叩いたつもりだったのに。百戦錬磨のグランド・バザールの商人には、私のような観光客は赤子の手をひねるようなものなのだろう。
しかも、帰宅後、開けてみると、受け皿とグラスの模様が全く違うではないか! この勝負、私の完敗。

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