スタージュ

2009年11月11日 (水)

マドレーヌのへそ

 

Img_3622_2_3 久しぶりにマドレーヌを作った。

  マドレーヌは、日本でも馴染みのあるフランス焼き菓子のひとつ。

 

 映画『Le Transporteur2』(2005年・仏)では、Francois Berleand扮する仏人刑事が、バカンス先のマイアミでマドレーヌを焼く場面があった。

 主人公は英国人Jason Stathamのカー・アクション映画。ポスターだけ見るとフランス映画に見えない。マドレーヌはフランス色を出そうとする演出だったのだろう。たぶん。

                       

 マドレーヌ、数あれど。
 特に有名なのが、”Madeleine de Commercy”
 フランス北東部ロレーヌ地方コメルシーという街がマドレーヌ発祥の場所なのだとか。パリのスーパーでも袋入りで販売されているほどポピュラーだ。

 コメルシーのマドレーヌは、バター、小麦粉、卵、レモン、砂糖が主な材料。日本で昔からある丸型ではなく、貝殻の型で焼く。ベーキングパウダーを使い、ぽっこりとおへそのようなふくらみがあるのが特徴だ。

 スタージュ先のレストランで、ミニャルディーズ用に小さなマドレーヌを焼いていた。
 最初は”へそ”の存在など知らなかったのだが、パティシエールが「温度差を作るとよく膨らむよ」と教えてくれた。
 生地を絞った型を少し冷やしてからオーブンに入れてみた。小さいけれど、それぞれちゃんとへそがぷっくり膨らんだ。

 かわゆい・・・。

 だれも気にもとめずにぽいと口に放り込むだろうけれど。
 「昨日よりかわゆい”へそ”を!」。そこだけミョーにこだわって、毎日焼き続けたのだった。

 

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 ※マルセル・プルースト『失われた時を求めて』で登場する”プチット・マドレーヌ”coquilles Saint-Jacques(ホタテ貝)の形の焼型。写真のマドレーヌよりもっと丸い。舞台になったCombrayという町にはそのマドレーヌが買われた店が存在するのだとか。

 

 物語に出てくる料理を再現した本、『プルーストの食卓』(宝島社)を読み返すと、アラン・サンドランスが料理を担当していた! ベーキングパウダーは使わず、赤砂糖はちみつを加えるルセット。焼き上がりはもっとしっかりした感じ?

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2009年10月 6日 (火)

アーティーチョークの食べ方 ②レストラン編


P1100151 にっころがしを作ろうと、土や毛?根?がみっしりついたサトイモの皮をプチ・クトーで力任せにガシガシむいているうちに、アーティーチョークのことを思い出した。

 フランスでアーティーチョークは一般的な野菜のひとつで、家庭でも食べられていると以前の記事で書いた。
 レストランで使われる食材でもあるが、その下処理はやってみないとなかなか難しい。

 コルドンの初級の実習で、いきなり「アーティーチョークのトルネ」が課題に出たときは緊張した。ほとんど馴染みのない食材を、これまた使い慣れないプチ・クトーでガシガシむいていくのだ。

 「よーく研いだナイフを用意して。切れないナイフは問題外」。fusilと呼ばれる研磨棒で「シャーン、シャーン」と自分のナイフを研ぎながらシェフは言った。

P1100154 軸を折り、びくびくしながらアーティーチョークの塊を手に取り、回しながら外側をむいて芯を出す。プチ・クトーに持ち替え、ホッケーのパック(←私的には)をイメージしながら、緑の部分を削りとり、面取りする。見た目通り、かなり固い。勢い余って自分の指を切りそうだったり、なかなか滑らかな切り口が作れず、作業は遅々として進まなかった。
 表面がすぐ黒くなるので、切り口に変色防止のレモン汁をつけるのも忘れてはいけない。

 最後に芯の中心に生えた毛をスプーンなどでかき取る。これも削り取りすぎて
しまうこともあり、なかなか難しい。完成したものはレモン水に漬けた後(写真右上)、小麦粉入りのお湯でブランシールし、白く仕上げる。

 

P1100180_2 こうして下処理を施されたアーティーチョークはサラダの器代わりになったり(写真右)、マリネされたり、ロティやピュレにされて付け合わせになったり(写真右下・ポワブラード)、様々な調理法で供されるわけだ。

 クワイやユリ根を思わせるほっこりした味わいがくせになる味。家でも自主練を重ね、上達したつもりでやる気まんまんだったのに、スタージュ先では

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「スタジエールにはアーティーショーのトルネはやらせるな!」と厳しいお達しが。まったく信頼されていないのだ、トホホ・・・。
 5,6人のキュイジニエが時折雑談しながらも、かご山盛りのアーティーチョークを次々と処理していく。この時ばかりは、みんなのゴム手袋がまぶしかった・・・。(←手が真っ黒に染まってしまうから)。仕方なく写真を撮り、別の作業をした。

 

 サトイモをガシガシ、力任せにむくようになったのは、このときの悔しさからなのかも。(一度水からゆでると簡単に皮がむけるそうです)



Img_3273  ※写真左は、俊輔のサッカーノートならぬ、私のコルドン・ノートの「アーティーチョーク編」。

 久しぶりに見ると、「こんなことまで!」とあきれるようなメモ魔ぶり。動画撮影OKだったら楽だろうに・・・。




 

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2008年9月29日 (月)

幸せのコブミカン!

Img_4942  「幸せのレシピ(No Reservations)」(2007年・米)をDVDで見た。

 インタビューでは、普段は料理を全くしないと答えていたキャサリン・ゼダ=ジョーンズだが、さすが女優。危なげなく、完璧主義者のシェフを演じていた。集中して、慎重にソースをたらすシーンなんて、ジェラシーを感じるほどかっこよかった。

 

 もちろん、料理の映像満載。中でも印象に残った食材が、「コブミカンの葉」
 トム・ヤム・クンなどタイ料理のマスト・アイテムらしい。
 タイ語ではバイマックルー(bai makrut)、英語ではkaffir lime leaf
 葉が2つ連なったような珍しい形の葉っぱで、フレッシュと乾燥のものがある。
Img_2473 映画の中では、N.Y.のチャイナタウン(写真右)で売られていた。


 映画では、意外な食材・・・として登場するが、実はフランス料理でも、その果実”エキゾチックな食材”として取り入れられている。フランス語ではCumbava
 私が出会ったのは、スタージュ先のレストランで。文字通り、ゴツゴツした緑の皮を魚料理のアクセントに使っていた。柚子っぽい。

Mv5bmti1nzq5mzu1ov5bml5banbnxkftz_3  アジアの食材のイメージが強いが、レユニオン島マダガスカル郷土料理でも用いられる食材らしい。Le poulet au combava(コブミカン風味の鶏料理)、cari d'espadon au combava(コブミカン風味のカジキのカレー)など鶏、魚料理に合わせるルセットを見つけた。現地では”combava”とつづるとか。

 スパイスの魔術師(と今も呼ばれているのかな?)、オリヴィエ・ローランジェL'huile de cumbavas(コブミカン・オイル)を売っている。
 HPでは食べ方の映像を見ることができる。
 粗塩と海草を敷いた皿に殻を開けた大粒のアサリ(生)を並べ、ライム汁、セルフィーユを散らし、仕上げにスポイドでオイルをタラリ、タラリ。柑橘類と潮の香りが今にもぷんと漂ってくるようで、実においしそう。

 サフランソースに合わせるのもおいしそうだが、最小限の要素でいただく、こちらのほうが、私好みだ。

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 ※私のバイマックルー・デビューは、タイ風グリーンカレーのキット(写真右)。ブーケガルニの要領で食べる前に取り除いて供するのか、入れたままでいいのか、タイ料理の作法がわからない。どなたか教えてください。
 フレッシュなものはさらに香り高いと聞いて以来、いつか出会う日を待っている。

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2008年5月20日 (火)

ないものは作るしかない。 ①サーモンのマリネ



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 世界中のもの、何でも手に入る国、ニッポン。
 食へ傾けるエネルギーには敬服するが、その価格が高いのも事実だ。

 気軽に食べられるからこそ、フロマージュバゲットはあんなにおいしく感じるのだ。

 と愚痴ってもしょうがない。高くて買えないものは、自分で作るしかない。

 韓国のコルドンブルーの開校に携わったシェフも、ベーコンやソシソンなどすべて手作りしたと言っていた。ならば、作ってみようではないか。

 手始めにサーモンのマリネを。

 日本のスーパーで売られているスモークサーモンは、妙に赤くて、塩気がきついものが多い気がする。入っている量も数枚程度と、上品だ。
 その乾いた食感が好みではなかったが、フランスのスーパーで売られているsaumon fumeはねっとりしておいしかった。
 前菜によし、サンドイッチにしてよし、のり巻きにしてもよし。万能選手のこの食材、遠慮せずにバクバク食べたいものだ。

 燻製は面倒でも、スタージュ先で教わったマリネなら簡単にできる。
 生食用サーモンに10%の塩と砂糖粗く砕いたコショウ(mignonette)、そしてディルをまぶし、待つこと48時間
 ねっとりとしたサーモンマリネの完成だ。

 いろんな大きさのサーモンの切り身で作ってみた結果、切り身は大きいほうがいいが、半身だとマリネする場所に困るので、個人的にはその半分サイズがちょうどいい。

Img_4926 身に沿って水平に削ぐように薄く、薄くスライスしよう。
 そのまま食べるなら、オリーブオイルとレモン汁で和えてもいい。ちょっとしたサラダを添えるだけで、十分なごちそうになる。
 垂直に厚めに切って、茹でジャガイモ、ピクルスと一緒にいただいても。

 いろいろと手作りしてみると、今までは作り方を知らなかっただけで、実は超簡単にできるものが多いことがわかった。

 ご存知でしたか?


 ※「もうできたかな〜?」
 味見と称して、余ったパンをトーストし、なんちゃってロックス(写真右)
 自分で作れば、サーモンもクリームチーズも惜しげもなくたっぷり使えるのがウレシイ。
 保存料や添加物もなし。何が入っているかわかっているのが、実は一番ウレシイのだ。

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2008年2月 6日 (水)

愛しのジゴ・ダニョー

 

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 やれ、焼き肉だ、牛丼だ、ハンバーガーだ、焼き鳥だと言ったって、日本人の食べる肉の量なんて、たかが知れているらしい。一人当たりの年間消費量は40㎏程度。

 フランスに目を転じれば。BSEや鳥インフルエンザ問題や魚市場の拡大などの要因を受け、年々、消費量が減少しているとはいえ、一人当たり、89.4㎏。(参考文献) 

 倍以上。本当に、”肉食ばんざい”な人たちだ。

 「仔牛のレバー、2枚切ってくださる?」と悠然と注文する年配のマダムすると、こちらも平然と、「これくらいの厚さでいいですか?」と、大きな赤黒い塊から1.5㎝はありそうな厚さを切り出す肉屋のムシュー。
 ああ、一体、どんな夕食を作るんだ?と好奇心がむき出しになる。

 そう、精肉店やスーパーの肉売り場には、牛、ブタ、鶏肉はもちろん、仔牛やウサギ、ウズラまで、ありとあらゆる種類・部位の肉が売られている。足、耳、脳みそまで!

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 中でも、日本人の目をきっとひくであろう食材のひとつが、gigot d'agneau(ジゴ・ダニョー)。長さ40㎝はあろうか、子羊のモモ肉が骨付きでゴロリと並んでいるのだ。

 

 スタージュ先のレストランでは時間があると、ジゴ・ダニョーの骨をはずす作業desossageを練習させていただいた。

 のろまな私。指で骨を確かめながら、「最初にここに刃を入れて、次は・・・」。毎回、時間を計り、汗だくになりながら骨付き肉と格闘したのも、今では懐かしい思い出だ。
 そういう意味でも、思い入れのある、特別な食材である。(しみじみ)

 

 骨付きのまま、ハーブをまぶしたり、包丁で開けた穴にニンニクを刺し込み、ローストするのがシンプルな食べ方。肉屋さんに頼んで、骨をはずしてもらったものをロールし、ローストしてもいい。
 なにしろ大きな塊肉。家族が集まる食事会など、大勢で食べたい料理だ。

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 焼き加減は、もちろん、ピンクが美しいロゼで、きまり。

 ソースがなくても塩・コショウだけで私には十分なくらい。マスタードをたっぷりつけて、召し上がれ。


 

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 ※写真右は、リクエストに応えて、キュイジニエの方々が我が家で焼いてくださったジゴ・ダニョー。

 ジャガイモのローストを添えて。家庭料理もプロの手にかかると、グンとワンランク、アップする感じ。キュイッソンも、もちろんバッチリ。

 子羊好きとしては、忘れられない味のひとつに。おいしい思い出を、ありがとうございました。


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2007年12月21日 (金)

おめでとう


Img_4874 パリでお世話になった日本人キュイジニエ(料理人)の方々、3人がそろってご昇格。

 シェフとしてお店をまかされた方。
 星付きレストランのスー・シェフになられた方。
 修行先数件目になる新たな三つ星レストランでポストを見つけられた方。

 おめでとうございます。

 「日本のハードさに比べれば、フランスのレストランは楽勝っすよ」
 皆さん、謙遜してよくこうおっしゃる。
 が、フランス料理の頂点のパリの星付きレストランで、外国人としてフランス人と肩を並べて働くハードさは部外者には到底想像もつかないものだろう。まして、彼らを指導するポストに就くとは・・・。

 今や、パリの有名レストランで働く日本人キュイジニエは決して珍しくない時代だが、友人の活躍はやはりうれしく、誇らしい。私のなかでは”快挙”である。

 そう、たぶんもう、彼らは世界レベル
 ニューヨークだろうが、ロンドンだろうが、どこでも働くことが出来る人たちなのだ。

 武者修行を終えて帰国された暁には、すばらしい料理とともにフランス料理のエスプリを日本の私たちに届けてくれることだろう。今から楽しみだ。

 激務に負けず、お身体に気をつけて。これからますますのご活躍を確信しています。

 

 ※お花はプージョランの通りにあるかっこいいフローリストEric Chauvinで作ってもらったブーケです。22,rue Jean Nicot 75007 Paris

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2007年8月27日 (月)

なんじゃこりゃ?な食材 ⑱tete de veau

 

 ※注意! 今日は少々、グロテスクな話題&画像付きです。

  内臓系の苦手な方は読まないほうが良いかも・・・。







 

 「市庁舎前のキス」など、パリの街角の風景を見事に切り取った作品で知られる写真家、ロベール・ドワノー(Robert Doisneau)。彼の写真集をパラパラと眺めていたら、あるページで手が止まった。

 L'echaudoir de la rue Sauval(ソーヴァル通りの熱湯処理室/1968年)。ランジスに移転する前、パリの胃袋、中央市場として機能していたレ・アール食肉処理場で撮影された写真だ。中央には、血が点々とついたエプロンを身につけた男性が牛刀を構えている。「なんの用だ?」と言わんばかりにその表情は険しい。

 そして、彼が左手で押さえ、今にも処理を始めそうなのが、tete de veau(仔牛の頭)なのだ。

 肉に限って言えば、何でも食べる国民だなあ、とフランス人には感心させられることが多いが、テット・ドゥ・ヴォーはその典型的な例だろう。
 フランス伝統料理のひとつなのだが、スタージュ先のレストランで、業者が搬入したテット・ドゥ・ヴォーのセットを初めて見た時の衝撃は忘れられない(写真左)

P1060005  お面状にきれいにはぎ取られた仔牛の頭の皮が箱につめられてやってくるのだ。耳の穴にはゴワゴワした耳毛。口の内側のギザギザの突起。ひげが生えた口元は”ゴマちゃん”のよう。

 「こんなものを料理に使うなんて!」
 コルドンでは見たことがなかった。興奮のあまり、しばらくの間、友人に会うたびに、その話をしたものだ。

 ”セット”は、血抜きと臭みを取るため流水に一晩漬けた後、ブランシールする。脳の表面の薄い皮をはぐのが難しい。モタモタしていると、白子のようにとろけてしまいそうだ。

 通常、精肉店で売られているtete de veauは、この状態の皮をロール状に巻き、タコ糸でしばったもの。

P1090139 これにゆっくり火を入れ、スライスし、sauce ravigote(タマネギ、ピクルス、ケッパーなどのみじん切り入りヴィネグレット)をかけていただく。

 レストランでは、やわらかく煮た皮、舌、軽く茹でた脳、トルネしたジャガイモを皿に盛り、ハーブがたっぷり入ったラヴィゴット・ソースを別に添える(写真右はリヨンのブションでいただいたもの)

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 ゼラチン質特有のねっとり感とソースの酸味がぴったり。舌はやわらかく、脳は白子のようなまったりした口当たり。
 口の中を洗い流すようにワインを飲んでは、また一口。
 食べている途中から、翌日は肌がつやつやになりそうな気がしてくるが、冷めてくると少しくどくなってくるのが難点か。

 あらかじめテリーヌにして、表面をカリッと焼いたカフェ・コンスタンや、フォアグラ入りのスライスを温めたA&Mのもの(写真左下)が、個人的には気に入っている。

 さて、ドワノーが撮影した冒頭の男性は、どうやって頭を解体してくのだろう?

P1050529 興味がある方は、こちらを参照ください。(注意! かなりグロテスクです)



 ○Cafe Constant
  139 rue Saint-Dominique
       75007 Paris
       TEL:01 47 53 73 34
       metro:La Tour Maubourg

 ○A et M Restaurant
      136 Bd Murat
       75016 Paris
       TEL:01 45 27 39 60
       metro:Porte de St-Cloud

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2007年8月12日 (日)

耳たぶの柔らかさ


Img_1792 日本では家庭科の授業で作ったきりだったのに、フランスに来て以来、すでに数回、白玉を作っている。日本からのおみやげに白玉セットをいただいたのだ。
 ありがとうございます。

                    
 白玉粉の袋を見ながら作る。白玉と言えば・・・”耳たぶの柔らかさ”! これが苦手なのだ。何度触っても、さっぱりわからない。揚げ句の果てに、耳周りが粉っぽくなる始末。

 どうやら、感触で確かめる才能がないらしい。
 コルドンでは肉の焼き加減を知る方法を2つ教わったが、難しかった。
 ひとつは、手。
 親指と他の指をくっつけた時の親指の付け根の硬さで肉の火の通り具合を見る。人さし指ならsaignant(レア)中指ならa point(ミディアム)薬指ならbien cuit(ウェル・ダン)、だったか?
 もうひとつはほほあご鼻の頭だったと思う。
 両方とも、何度やっても、よくわからない。そのあたりがプロの仕事たるゆえんなのだろう。

 他にもたくさんの目安がある。
 日本でいう”ひとつまみ”は、pincee(パンセ)だが、単位は一緒でも、人さし指と親指で文字通り”つまむ”日本と比べると、中指まで加えた”つかむ”という感じ。スモウ? しかも、手の大きな人のパンセと小さい人のパンセでは数グラムの違いがありそうだ。 
 ちなみに”ひとつかみ(ひと握り)”はpoignee(ポワニエ)で、これはさらに個人差が出そう。

 日本や米国だと当たり前に使う計量スプーンもない。スープスプーン(cuilleres a soup/大)コーヒースプーン(cuilleres a cafe/小)で何杯・・・と言うざっくりした表記に戸惑う人もいるのでは。

 オーブンの温度も、だいたい
 年配のシェフだと「サーモスタット6か7かな〜」などと、理解不能な単位を使うからやっかいだ。(古い型のオーブンは温度表示でなく、サーモスタット表示だった)

 コルドン時代は、正確に教わりたい一心で、レシピ通りの分量で作ろうと躍起になっていた。当然、量りはマスト・アイテム。
 シェフがオーブンの温度を言い忘れると、必ず誰かが「何度ですか?」と質問した。何分間焼くのか、煮るのか、蒸すのかが気になってしょうがなかった。
 分量通りに練った生地がベトつくと、「ルセット、間違ってるよ〜」と不満に思い、材料を目分量でドバドバ加えるクラスメートを「なんと大ざっぱな!」とあきれて見ていた。

 ところが、スタージュでキッチンで働いてみると、”皮膚感覚”が一番大切だということにほどなくして気がついた。
 肉の焼ける音に耳を傾け、オーブンの温まり具合を見ながら、ケーキの焼き色をチェックし、ムースの表面に触れて火の通りを確かめ、何度も味をみながらソースの味を決め、濃度を確かめながら、少しずつバターを加えていく、etc、etc・・・。

Img_1811 そんな中には、大ざっぱな目安があるだけで、グラム単位、正確な温度、調理時間など、あってないようなもの(もちろん、例外もたくさんあるが)。
 舌、目、鼻、感触、耳、体感温度など、五感を稼働して作るものなのだ、料理というものは。

 グラン・シェフによるレシピ本がこれほど巷に出回っても、だれもがその料理を再現できるわけではないのは、そんな経験値の違いだろう。

 

 ”耳たぶの柔らかさ”さえわからない私は、絶望的・・・と白玉を丸めながら考えた。


 ※写真右:フレーズ・デ・ボア、ブルーベリー、アイスクリームをプラスし、”白玉フランセーズ”(←勝手にネーミング)の完成です。

 

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2007年8月 7日 (火)

agua de beber

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 ”おいしい水”、飲んでいますか?

 

 スタージュ先のレストラン。
 満席で(ワタシ的には)きりきり舞いしていた時、シェフがBADOIT(バドワ)をひょいと差し入れてくださった。
 熱がこもるキッチンで、汗だくになりながら、キンキンに冷えた瓶入りのバドワをラッパ飲み。
 そのおいしかったこと!
   部活の後に飲むコーラ、仕事帰りに飲むビールも格別だったが、それとは比べものにならないほどで、「おいしい!」と思わず口に出してしまった。

 

 BADOITやPerrier(ペリエ)はフランスを代表する発泡水。

 フランスを旅行した人なら経験があると思うが、レストランで水を頼むと、「plat ou gazeuse?」と尋ねられる。普通の水ならplat、ガス入りならgazeuse。”Evian””Vittel”など銘柄を告げてもいい。
 星付きレストランでは、 ラベルからしてまばゆい”CHATELDON"を置いているところも(私には味の違いが良くわかりませんが)。
 もちろん、無理にミネラル・ウォーターを頼む必要もなく、"carafe d'eau(普通の水道水をカラフに入れたもの)"なら無料だ。

 発泡水は体(特に胃腸)に良いと考えられ、特にドイツではフランスよりたくさん飲まれている印象が。
 ドイツ人の友人の子どもたちは、オレンジやリンゴ・ジュースを発泡水で割って飲んでいたし、ミュンヘンでは水を頼むと、当然のように、背の高いコップになみなみとつがれた発泡水が運ばれてきて、驚いた。売り場でも普通の水はほんのわずかのスペースで・・・。さすがビールの国!?


 炭酸飲料を飲むくらいなら・・・と飲み始め、今ではミネラル・ウォーターと並び、すっかり我が家の常備飲料となった発泡水だが、日本では目が飛び出るほど高い価格なのに驚く。フランスの5〜6倍? これではコーラやビールのほうが安いではないか。

 発泡水ブームの到来が待たれるところだ。



 ※仏ミネラル・ウォーター市場は、ダノン(Evian, Volvic, Badoit)、ネスレ・ウォーターズ(Perrier, Vittel, Contrex)、ネプチューン・キャステル(Cristaline, Saint-Yorre, Thonon)の3社が大半を占める。
 15年間売り上げ首位を守るのは、Cristalineだが、どのブランドも、カルフールやルクレールなどスーパーのPB商品に近年押され気味。パッケージ・デザインを変えたり(バドワの赤ボトル)、新商品を開発したり(細かい泡のペリエ)と、消費拡大に躍起になっているものの、お互いのシェアを食い合うだけで、業界全体の売り上げは年々下がる一方だという。
 一方で、見直されているのが水道水。消費者の志向を示すように、BRITAなど水をろ過する器具の売り上げも年々伸びているという(2005年は前年比+22%)。(参考:2006年6月8日付Le Figaro←ちょっと古い記事ですが)

 それにしても、パリの水は硬い!硬すぎる。料理、洗濯、掃除・・・日々、カルシウムとの闘いなのだ。

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2007年7月24日 (火)

道具馬鹿一代  ⑪シリコンブラシ

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 かなり愛用している道具のひとつが、ドイツで買ったシリコンブラシ(写真右)

 溶かしバターや卵黄を塗ったり、焼きおにぎりに醤油を塗ったり、焼き鳥のタレを塗ったり、プレ・ロティのアロゼに使ったり・・・何かと大活躍。
 毛も抜けず、食洗機にかけられ、手入れも簡単。匂いもつかない。

 そしてなにより、かわいい。時々、寝癖がついているのも愛らしい。シリコン独特の手触りもいい感じ。

                         

 コルドンの実習の時間には
「貸して! 貸して!」
と順番待ちが出るほどの人気アイテムだった。(きっと、誰もが自分の刷毛を使いたくなかったのだろう)

 気をよくして、パティシエールの友人に自慢すると、
「レストランで使ったら、『おまえ、ふざけるな!』って怒られそうですよね」
といい顔をしなかったので、シュン・・・。
 そんなことで怒られてはたまらない。毎朝マドレーヌを焼かねばならなかったスタージュ先には持っていかなかった。

                         

 本来ならMATFER社馬毛の刷毛なぞ、紹介すべきところだが、お菓子を作らないので、これで十分なのだ。コルドンのセットに入っていた刷毛は、ほかのお道具とともにしまい込んだまま・・・。


 ※左はデンマークみやげにいただいたシリコンブラシ。
 PEJというキッチンブランドで、デンマーク人デザイナー、Marcus Vagnbyによるグッド・デザイン。もったいなくて使ったことはまだありません。

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