昨年9月15日、米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻し、”リーマン・ショック”という金融危機の大波に世界中がのみこまれた。
フランスも例外ではなかった。
「金融危機の余波で観光客がめっきり減り、客足が…」。レストランのシェフを務める知人からの便りで厳しい実情がリアルに伝わってきた。
不振が続く外食産業の活性化対策として、7月から外食にかかる付加価値税(VAT)を19.6%から5.5%に引き下げたそうだが、どれほどの効果が見られるのだろう? 一度きつく締めた財布のひもをゆるめるのはなかなか大変そうだが。
今さらな話題で恐縮だが、パリを代表するホテルのひとつ、Le Crillonのレストラン「Les Ambassadeurs」のシェフで知られるJean-Francois Piegeが、8月で同店を辞めたそうだ。
A.デュカスの愛弟子としてそれはそれは繊細で美しい料理の数々を生み出していた。一つ星に降格していたLes Ambassadeursのシェフに2004年就任。
わずか1年で二つ星を取り戻し話題となった。
星付きレストランなどそうそう行けない身分だが、「帰国前に最後にもう一度ピエージュの料理を!」とリピートした唯一の店だった。
クリヨンでの5年間で、ピエージュはとうとう3つ星を獲得することはできなかったが、私にとっては堂々の”三つ星”レストラン。あの豪奢な雰囲気のなか、豪華な食材をふんだんに使った彼の洗練された皿を味わうことはもうできないと思うと少し残念だ。
最近ではテレビ番組に出演することもあったというから、自分の将来についていろいろと考えるところがあったのだろう。
富裕層や観光客など限られた客層のグラン・メゾンより、「レガラード」「ラミ・ジャン」「クリスチャン・コンスタン」など、庶民が気軽に足を運べる、”ネオ・ビストロ”のシェフたちが注目を集めていることも関係があるのかもしれない。
人生の新たなページをめくる第一弾は、なんとサン・ドミニック通りのブラッスリー「Thoumieux」で始まるのだとか。洗練されたピエージュの料理と、古き良きパリのレストラン然とした店のギャップに、イメージがわかない…。でも大散財しなくてもピエージュの料理が食べられるなら、かなりウレシイではないか。
知らなかったのだが、ピエージュはデザイン・ホテルのCostesのThierry Costesとともにトゥーミューを買収、今年初めの営業からピエージュが監修したメニューで営業しているという。夏の間に改修工事を済ませ、9月には新生Thoumieuxとしてオープンする予定だと7月の記事にはあるが…。
パリの皆さん、工事の進捗状況はいかがですか? 金融危機のあおりで工事ストップなどなっていませんように。(←まさか!)
※写真は、フランスの最後の思い出に友人らと出かけたLes Ambassadeursでの写真。クリックすると拡大します。
もう2年も前のことで何がなにやらわかりませんが、おいしくて満腹で、大満足で帰宅したのは確かです。

新シェフはPark HyattのJean Francois Rouquette氏。はたしてどんな料理に変わるのだろうか。
○Les Ambassadeurs

10, Place de la Concorde
75008 Paris
TEL:01 44 71 16 16
○Thoumieux

79, Rue Saint-Dominique
75007 Paris
TEL:01 47 05 49 75