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2008年6月22日 (日)

Kafka's Soup

 

Img  『Litterature et gourmandise(文学と美食)』の著者、F・デグランシャン氏の講演会に行った。著名なフランス文学の中に登場する料理と、それにまつわるフランス食文化の話が聴けるのでは?と期待していたが、出版のプロセスの話が中心で、少し残念だった。

 著者が絶賛する、ルセットの中にある文体の美しさは私にはわからないが、仏文学に登場する50ルセットを収録するにあたり、一つ星シェフ(L'Hotel)、スティリストなどアーティストたちとコラボした本はかなりスタイリッシュ(45ユーロの豪華本!)。
 羽毛に埋もれた「ウフ・アラ・コック」(『プティ・ショーズ』より)、タマネギのエマンセに囲まれた「オニオン・スープ」(『ボヴァリー夫人』より)など、フランスっぽいアーティスティックなスタイリングがかっこよかった。

 文学に登場する食ーー。
 このアプローチで書かれた本で最近読んだものを2冊紹介。

 『ラブレーの子供たち』(四方田犬彦著、新潮社)は、「あの人のボナペティ」というタイトルで『芸術新潮』で連載したものをまとめた本。

Img_0001 「ギュンター・グラスの鰻料理」など、物語に登場した料理を再現している回もあるが、「ラフカディオ・ハーンのクレオール料理」「アンディ・ウォーホルのキャンベルスープ」、「武満徹の松茸となめこのパスタ」という風に、作家に限らず芸術家の残した、あるいは芸術家にまつわるレシピを再現し、作品やその人となりを時代背景やエピソードとともに解説する内容で非常に興味深かった。

 

 『Kafka's Soup』(Mark Crick著、Harcourt)は、カフカからオースティンまで世界文学の巨匠たちの作風・タッチで14のレシピを書いた、アイディア賞ものの一冊。

 『俺はウイスキー・サワーをすすると、まな板でタバコの火をもみ消した。洗い桶から虫がはい上がろうとしていた。俺が欲しいのは「マキシム」のテーブル、金、それからゴージャスなブロンドだったが、目の前にあるのは羊の腿肉だった。(中略)手にナイフの刃の感触を感じながら、俺はタマネギをスライスした。俺が我に返ると、そこにはニンジンが横たわっていた。どれもぴくりとも動かない。そいつらをフライパンの中に投げ入れ、ありったけのディルの茎、月桂樹の葉、コショウ一握り、塩ひとつまみも加えた。(後略)』(「レイモンド・チャンドラー風Lamb with Dill Sauce」より)

 一杯のカプチーノからいろんな思い出を想起する「マルセル・プルースト風Tiramisu」、誰だかわからない、果たして招いたかどうかもわからない訪問者にKがスープを作る不条理な設定「フランツ・カフカ風Quick Miso Soup」などおもしろい。作家の文体を理解できるほど文学通だったらもっと楽しめるだろうに!

 さて、F・デグランシャン氏の講演で印象に残った話のひとつが、「サラダと卵だけの質素な食事でも、文学の話題で豊かにすることができる」というもの。
 確かに、話が弾めば何を食べてもおいしく感じる・・・というのはアリだが、「ドーデの作品に出てくるサラダはね〜」などとうんちく炸裂のフランス人、本当にいそうだ・・・。

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