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2007年8月12日 (日)

耳たぶの柔らかさ


Img_1792 日本では家庭科の授業で作ったきりだったのに、フランスに来て以来、すでに数回、白玉を作っている。日本からのおみやげに白玉セットをいただいたのだ。
 ありがとうございます。

                    
 白玉粉の袋を見ながら作る。白玉と言えば・・・”耳たぶの柔らかさ”! これが苦手なのだ。何度触っても、さっぱりわからない。揚げ句の果てに、耳周りが粉っぽくなる始末。

 どうやら、感触で確かめる才能がないらしい。
 コルドンでは肉の焼き加減を知る方法を2つ教わったが、難しかった。
 ひとつは、手。
 親指と他の指をくっつけた時の親指の付け根の硬さで肉の火の通り具合を見る。人さし指ならsaignant(レア)中指ならa point(ミディアム)薬指ならbien cuit(ウェル・ダン)、だったか?
 もうひとつはほほあご鼻の頭だったと思う。
 両方とも、何度やっても、よくわからない。そのあたりがプロの仕事たるゆえんなのだろう。

 他にもたくさんの目安がある。
 日本でいう”ひとつまみ”は、pincee(パンセ)だが、単位は一緒でも、人さし指と親指で文字通り”つまむ”日本と比べると、中指まで加えた”つかむ”という感じ。スモウ? しかも、手の大きな人のパンセと小さい人のパンセでは数グラムの違いがありそうだ。 
 ちなみに”ひとつかみ(ひと握り)”はpoignee(ポワニエ)で、これはさらに個人差が出そう。

 日本や米国だと当たり前に使う計量スプーンもない。スープスプーン(cuilleres a soup/大)コーヒースプーン(cuilleres a cafe/小)で何杯・・・と言うざっくりした表記に戸惑う人もいるのでは。

 オーブンの温度も、だいたい
 年配のシェフだと「サーモスタット6か7かな〜」などと、理解不能な単位を使うからやっかいだ。(古い型のオーブンは温度表示でなく、サーモスタット表示だった)

 コルドン時代は、正確に教わりたい一心で、レシピ通りの分量で作ろうと躍起になっていた。当然、量りはマスト・アイテム。
 シェフがオーブンの温度を言い忘れると、必ず誰かが「何度ですか?」と質問した。何分間焼くのか、煮るのか、蒸すのかが気になってしょうがなかった。
 分量通りに練った生地がベトつくと、「ルセット、間違ってるよ〜」と不満に思い、材料を目分量でドバドバ加えるクラスメートを「なんと大ざっぱな!」とあきれて見ていた。

 ところが、スタージュでキッチンで働いてみると、”皮膚感覚”が一番大切だということにほどなくして気がついた。
 肉の焼ける音に耳を傾け、オーブンの温まり具合を見ながら、ケーキの焼き色をチェックし、ムースの表面に触れて火の通りを確かめ、何度も味をみながらソースの味を決め、濃度を確かめながら、少しずつバターを加えていく、etc、etc・・・。

Img_1811 そんな中には、大ざっぱな目安があるだけで、グラム単位、正確な温度、調理時間など、あってないようなもの(もちろん、例外もたくさんあるが)。
 舌、目、鼻、感触、耳、体感温度など、五感を稼働して作るものなのだ、料理というものは。

 グラン・シェフによるレシピ本がこれほど巷に出回っても、だれもがその料理を再現できるわけではないのは、そんな経験値の違いだろう。

 

 ”耳たぶの柔らかさ”さえわからない私は、絶望的・・・と白玉を丸めながら考えた。


 ※写真右:フレーズ・デ・ボア、ブルーベリー、アイスクリームをプラスし、”白玉フランセーズ”(←勝手にネーミング)の完成です。

 

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