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2006年12月 5日 (火)

リヨンとその周辺  ⑧コテコテ、古典! ポール・ボキューズ後編

 結論から、言ってしまおう。
 
P1090076 ポール・ボキューズ。
  フランスで訪れたレストランのなかで、内装、サービス、そして料理、すべてにおいて、もっともクラシックだった(それほど多く行ったことがあるわけではないが)。コンテンポラリー・フレンチが時代の潮流とすれば、むしろ新鮮に感じるほど。
 

 周知の通り、ボキューズ氏はかつて、ヌーヴェル・キュイジーヌの旗手として知られた人。何がきっかけになったか知らないが、ある時から、古典、伝統料理回帰に方向転換したという。
 

 前菜のスープ、2品が運ばれてきた。
 パイで包まれたテット・デ・リオン。Soup aux truffes noires V.G.E (Plat cree pour l'Elysee en 1975)。(冒頭の写真)
 氏が料理人として初めてレジオン・ドヌール賞を受賞したときに、当時の大統領、ヴァレリー・ジスカール=デスタンに捧げたというエピソードで知られる、黒トリュフのスープだ。
 さっくりと焼けたパイ皮を破ると、黒トリュフの香りが、湯気とともに立ち上った。なんとも、贅沢だ。P1090078

 ムール貝のスープ(Soupe de moules de Bouchot Aux pistils de safran)は濃厚ながら、サフランの風味と酸味が効いている。もちろん、ムール貝もプリッと。
 

 ここで、いきなり、トックをかぶったボキューズ氏が登場
 80歳には見えない。想像していたより小柄で、終始にこやか。子どもたちに声をかける姿は、仏料理界の重鎮というより、よく気がつく、優しいおじいちゃんという感じだ。(スープの途中だったのと、興奮と感激で、不覚にも写真撮影をすっかり忘れてしまった! 今も悔やんでいる・・・)

P1090082                                                                     

 メインの、ブレス鶏の豚膀胱包み(Volaille de Bresse en vessie "Mere Fillioux")がやってきた。
 おずおずとカメラをかまえると、「ちゃんとお見せして」とメートルに指示され、白い上着の彼が、にっこりポーズしてくれた。この調子だと、王様のようにふるまっても許してくれる気がする。

                                                                      

 風船のように膨らんだ膀胱のなかに、しっとりと火が通ったブレス鶏が入っていた。メートルが鮮やかな手つきで、さばいていく。

 「胸肉と腿肉、どちらからお召しあがりになりますか?」とたずねてくださる。モリーユのクリームソース、ガルニチュールも、その場で盛り付け。残りは保温のため、再びキッP1090085 チンへ。
 ブレス鶏のおいしさは、言うまでもない。

 
 アントレ、プラともポーションが大きく、さすがに鶏のお代わりの途中でギブ。フロマージュも、パスしてしまった。

P1090095 デザートはワゴンに載ったデザートから選び放題。軽そうなCoupe de fruits rouges beaujolaiseを。ああ、もっと強靭な胃袋があったなら!

                                                                      

 見た目は垢抜けないし、クリエイティブな発見はそこには、ない。が、誰が食べても「おいしい」と感じる、及第点の料理がある。そこがボキューズのすごいところなのだろう。
P1090108 伝統料理、なにが悪い。古臭い料理、いいじゃないか。フランス人はこういうのが好きなのだよ・・・。ムシューの心の声が聞こえてくるようだ。

 コンテンポラリー・フレンチ? 大いに結構。
 でも、フランス料理の「ねっこ」。
 フランスで育つ食材、脈々と引き継がれてきた調理法、その美食を培ってきたフランスの歴史と文化・・・。あなたは、それを知った上で、フレンチを食べていますか?
 やんわりと、そんなことを問いかけられているような気分になった。古典料理に触れるとは、こういうことなのかもしれない。

Img_2334_2  お手洗いに立つと、ガラス張りになったキッチンが見えた。どうぞ、どうぞ、と招き入れてくれる。
 どこから、だれから見られてもいい、鮨屋のカウンターのように整然としたそれ。
 ピカピカに磨きあげられたストーブが美しい。営業が終わるたび、力を込めて磨いているに違いない。

 料理人の「ねっこ」が、しっかりと育っているのだろう、ここでスタートを切る人はきっと幸運なのだろう、と思った。 

  (参考:http://ja.wikipedia.org

 ※写真は忘れたが、サイン入りの特大カルトはいただいた。名前もちゃんと書いてくれ、感激。

○Paul Bocuse
  L'Auberge du pont de Collonges
  69660Collonges-au -Mont-D'Or
  Tel 04 72 42 90 90
    Fax 04 72 27 85 87
  http://www.bocuse.fr/

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コメント

farafelさん、こんばんは。

感動しました。
この世代の方々の偉大なる功績に
日本国内も外国の料理人の方々にも敬意を表する私です。

farafelさんが、現役で仕事をされているムッシュ・ポールと
時間を共有されたという事実は素晴らしいの一言です。

フェルナン・ポワンの影響を大きく受け継いだ
その歴史の貴重な香りを味わってみたいと思いました。

心の中の映像は永遠♪
撮り損ねたとおっしゃるムッシュ・ポールとの写真は
拝見しなくともその光景は浮かび 映像をみているようです。
最小限にされた言葉の中にこれだけの意味を隠した
farafelさんのテキストにも感動しています。

投稿: まどれーぬ | 2006年12月 7日 (木) 16時18分

 前編を読んでfarafelさんがどんな感想を持ったのか楽しみにしていました。そして後編、私も全く同じ気持ちでしたので、とてもうれしかったです。
 日本から食べに来た人たちは味が濃いとか重いとか斬新でないとかおっしゃる方が多く、なぜ三ツ星か?確かめに行きました。で、おいしかったです。しかもとても楽しませていただきました。お店の皆さんがお客さんに楽しい時を過ごしていただこうと言う気持ちを持ってサービスしてくれているのが伝わってくるところです。
 最近の三ツ星は説明を受けなくては何を食べているのか解らないところが多く、それはそれでとても面白いのですが、安心して思い切り楽しめるこういうレストランも大好きです。

投稿: madame-Y | 2006年12月 7日 (木) 20時49分

やはり非常にクラッシックなのですね。
私は、軽い料理も好きですが、重いものも大好きです。
ただ、クラッシックな店に行っていつも思うのは、
量を7割、価格を7割にしてくれたら、ちょうど良いんですよね。
フランスでは、残すのは失礼でないと言いますけど、やっぱりもったいない。(貧乏性ですが…)
量を控えめにする代わり、価格も抑えてくれると、もっと頻繁に行けると思いますが…。
でも、大食いのフランス人を満足させるのには、あれくらい必要なのでしょうね。
例の会の話、ちょっと待ってくださいね。(忙しくて、まだ書いていません。)

投稿: ムッシュー | 2006年12月 8日 (金) 00時12分

おお~paul Bocuse (ため息。。)いつか行ってみたいです。

世界中で有名なお店は実際行くとがっかりする事が多いと聞いたりもしますが、お料理に詳しいFarafelさんをして フランス料理ここにありと 確信させるなんて よほど素晴らしい所だったんですね。しかも大御所のご本人に会えたなんて。。。写真を撮らなかったのはうーん 残念!悔やまれますね。。

フランスでこのように基本に忠実な老舗がこれからも残るであろう事は疑いようがありませんが(フランス人は古いものも好きですしネ*^_^*)、しかしなぜtraditionnel とよばれる所は量が多いのでしょう。

前回パリのあるビストロ(traditionnelとカテゴリ~される所)で仔牛の腎臓のロティ を頼んだら 葡萄の巨峰か!?と思うような 房になったままのがごろっと丸々出てきて ぶっとびました@@;

これっておしゃれに盛ったら、3人前ぐらいになったんではないでしょうか。。。
強靭な胃袋が欲しいというお気持ち よ~くわかります。

フランスの映画を見ていると必ずと言っていいほど食事のシーンが出てきますね。
きっとフランス人って映画に食べ物出てこないとがっかりするんではと思うくらい 
まぁきっとそれくらい フランスの人は美味しいものを食べることが好きなんでしょう なんて思っております。

投稿: Mocha et Latte | 2006年12月 8日 (金) 06時33分

まどれーぬさん、こんにちは。

心の中の映像は永遠。
なんと的確な言葉でしょう。
そうですよね。そうなんですが、最近、つい写真をたくさん撮ってしまいがちです。デジカメだから、でしょうか。
前はレストランで写真なんて、恥ずかしくて撮れなかったのですが。

掲載する写真も、増えたような。
もっと文章で、表現豊かに書くことができたらいいのですが。

投稿: farafel | 2006年12月 8日 (金) 08時27分

madame-Yさん、こんにちは。

おっしゃるとおりです。
特に、「楽しんだ」というところ、ものすごく共感です。大人のディズニーランドというか。緊張しない雰囲気で、居心地が良かったのです。

味は各々好みがあるので、なんともいえません。少し、コルドンを思い出しましたが、こちらも、安心できるおいしさでした。

投稿: farafel | 2006年12月 8日 (金) 08時35分

ムッシューさん、こんにちは。

お値段は決して安くはありませんが、三ツ星にしては安いほうではないでしょうか。たぶん。
私も残すのが嫌いなので、量7割には賛成です。今回もブレス鶏を泣く泣く残してしまいました。2人で一羽は、ちょっと・・・。

例のルポ、楽しみにしています。

投稿: farafel | 2006年12月 8日 (金) 08時42分

Mocha et Latteさん、こんにちは。

ビストロはどこでも普通においしいけれど、量が多いですよね。

ロニョン丸ごとだと、おっしゃる通り、巨峰のようでしょうね。私は大好きですが。
アントレコットとか、お皿からはみでている時があります。

パンやジャガイモを控えながら、やっと食べ終え、さすがに満腹で、デザートはパスというと、かなり驚かれますよね。いやはや、恐るべし、フランス人の胃袋。

投稿: farafel | 2006年12月 8日 (金) 08時47分

あはは 内臓系 お好き?なんですね・・
私も結婚してから色々試しました(というか試させられました (~_~)主人が大好き!なトリップ系は今でも苦手です。
せいぜいリードヴォー フォアドヴォーあたりでしょうか。ところで近年 マルシェでも馬肉やさんみかけないんですが何か理由があるんでしょうかしら・・・

投稿: Mocha et Latte | 2006年12月 9日 (土) 04時05分

Mocha et Latteさん、こんにちは。

マルシェで馬肉屋さんがあったのですね。
知りませんでした。
街中ではたまに馬肉屋さんを見かけますが。
まだ試してみたことはありません。
カルパッチョとか、あるのでしょうか。
馬刺し気分になれますよね。
久々に食べたくなってきました!

投稿: farafel | 2006年12月11日 (月) 07時51分

こんにちは。ポール・ボキューズ、海外初出店で、六本木の新しくできる新国立美術館の中にできるそうです。ランチでなんと1800円!安いですよね・・・・。

投稿: kao | 2007年1月14日 (日) 20時26分

kaoさん、こんにちは。

そうみたいですね。

既にあるパン屋さんは、あまり印象がないので、ちょっと心配・・・。(余計なお世話ですが)

投稿: farafel | 2007年1月15日 (月) 09時28分

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